忍者ブログ

はらっぱ 小話

ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。

[95]  [94]  [93]  [92]  [91]  [81]  [75]  [68]  [66]  [51]  [47

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


亮介さん*ホラーナイト

「重いんだけど」

と、振り向いた顔は私の友達ではなかった。ずっと友達だと思って、縋り付いていたリュックから手を離す。けっこう長い間このリュックを掴んでたんだけど…。

「すいません」

えへっと笑ってごまかそうとしてみたけれど、彼は冷やかなままだ。小柄な、同年代、かな? 首からゾンビのえじきを3つもぶら下げている。数が多くても効果は一緒だと思う。けれど、やたらとゾンビに追いかけられた理由がわかった。その子のゾンビのえじきのせいだったんだ。そのせいもあって、長い間、友達と気づかずにいたんだろう。

「まぁ、いいけど。それ、どこで売ってるんですか」

そう言って私が首からかけているゾンビの血をしめした。フードカートとかどこでも売ってるんだけどな。ここからなら…

「あっちのフードカート、です」
「フードカート」

私の言葉を繰り返して、パンフレットに目をこらす。パークに慣れてないみたいだ。イントネーションも関西じゃないし、遠方から来たのかも。その時、私の携帯が鳴った。友達からラインが入ったのだ。

「えっ、ひどー」

友達たちは、はぐれた私を置いて、先に貞子に行ってしまった。

「何、置いてけぼりにされたの」

彼はふっとバカにしたように笑った。誰のせいだと思ってるんだ。いや、自業自得だけど。それでもバカにされたことに、むっとして無言でにらむけど彼は気にするそぶりもない。

「じゃあ、ちょうどいいや。フードカートまで案内してもらえますか」
「は」
「だって、一人でしょ。今オレと離れて大丈夫なんですか」

丁寧な言葉使ったり、無遠慮だったり、今一つ、この子がつかめない。ただ、わかったことは一つだけ。私の好きなSっ気を醸し出しているってこと。

確かに友達とはぐれたし、このゾンビエリアで一人になるのはイヤだ。

彼に了承するよりも早く、後ろでキャーという悲鳴とブィーンというイヤな音が響いて、私は彼の後ろに素早く回る。彼は来た来たと喜んでスマホのカメラをかまえている。

ゾンビは彼をめがけてやってくる。嬉しそうに写真を撮る彼の後ろで、今日の夜はきっと長くなると思った。

PR

メイちゃん*ワンライ「ヒッティングマーチ」 | HOME | 体育祭妄想


プロフィール

HN:
はらぺこ
性別:
非公開


忍者ブログ [PR]
template by repe