はらっぱ 小話
ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。
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メイちゃん*ワンライ「ヒッティングマーチ」
昨日から頭の中で山本リンダの「狙いうち」がリフレインしている。それというのも、昨日、野球部の応援に行ったせいだ。
「なんで、狙いうち?」
突然話しかけられて、はっとする。うっかり鼻歌で歌ってしまっていたらしい。顔を上げると、成宮が少し不機嫌な顔をして私を見下ろしていた。
「何か、昨日の試合で聞こえてたから、耳に残っちゃって」
「気に入ったんだ?」
口の端を上げているのに、冷え冷えと感じるのは目が笑ってないからだ。
「気に入ったっていうか、ほんと耳に残っただけだけど」
「イケメンだもんね」
「誰が?」
どうも成宮の言いたいことがわからない。ただ推測できるのは、相手チームの応援で流れていたものだから、あまりいい気がしないのだろうということくらいだ。
でも、昨日、勝ったのに。
昨日の試合では成宮が途中から投げて、そして、勝ったのだ。野球のルールを知らないわけではないけれど、プレーの細かいことまではわからない。ただ一年生の成宮が試合に出ることはすごいことだったくらいはわかる。そして、ほとんど打たれなかったことも。
「狙いうちは一也のヒッティングマーチだから。アイツ、イケメンでしょ。気に入ったんでしょ」
ふんっと成宮は鼻を鳴らす。
「イケメンかどうかなんてわかんないけど」
スタンドからあんな遠くの人の顔なんてほぼわからない。まぁ、成宮は見慣れているからわかったけど。それでも表情までは難しい。
「イケメンだよ、アイツ。でも試合に勝ったのオレだからね! てか、オレのヒッティングマーチは耳に残ってないわけ?!」
何が理由でこんなに絡まれなきゃいけないのか。成宮のお子様気質はすでに学年でも有名だけど、ほんとわからない。
「サウスポーでしょ」
ちゃんと応援してたんだから、成宮のヒッティングマーチくらい覚えている。左利きでピッチャーでサウスポーって単純だなぁって思ったことは内緒だ。ため息交じりに言えば、覚えていたことには満足したのか、成宮の目元が少しゆるんだ。わかりやすい。
「じゃあ、これからはサウスポー歌えよ!」
ビシッと左の人差し指で私を指すと、満足したのか、自分の席へと戻っていく。いったい何だったのか。その背中をあっけにとられて見送った。ふと視線を感じてその先を見れば、神谷と目があった。きっと今のやり取りを全部見ていたのだろう。
「何なの、あれ」
「坊やだからな」
にやにやと笑う神谷の言葉に私はため息をつくしかできない。
「まぁ、おまえもいい勝負だと思うぜ」
それって私も子供だって意味なのか。じろっとにらむと、神谷は首をすくめた。
「なんで、狙いうち?」
突然話しかけられて、はっとする。うっかり鼻歌で歌ってしまっていたらしい。顔を上げると、成宮が少し不機嫌な顔をして私を見下ろしていた。
「何か、昨日の試合で聞こえてたから、耳に残っちゃって」
「気に入ったんだ?」
口の端を上げているのに、冷え冷えと感じるのは目が笑ってないからだ。
「気に入ったっていうか、ほんと耳に残っただけだけど」
「イケメンだもんね」
「誰が?」
どうも成宮の言いたいことがわからない。ただ推測できるのは、相手チームの応援で流れていたものだから、あまりいい気がしないのだろうということくらいだ。
でも、昨日、勝ったのに。
昨日の試合では成宮が途中から投げて、そして、勝ったのだ。野球のルールを知らないわけではないけれど、プレーの細かいことまではわからない。ただ一年生の成宮が試合に出ることはすごいことだったくらいはわかる。そして、ほとんど打たれなかったことも。
「狙いうちは一也のヒッティングマーチだから。アイツ、イケメンでしょ。気に入ったんでしょ」
ふんっと成宮は鼻を鳴らす。
「イケメンかどうかなんてわかんないけど」
スタンドからあんな遠くの人の顔なんてほぼわからない。まぁ、成宮は見慣れているからわかったけど。それでも表情までは難しい。
「イケメンだよ、アイツ。でも試合に勝ったのオレだからね! てか、オレのヒッティングマーチは耳に残ってないわけ?!」
何が理由でこんなに絡まれなきゃいけないのか。成宮のお子様気質はすでに学年でも有名だけど、ほんとわからない。
「サウスポーでしょ」
ちゃんと応援してたんだから、成宮のヒッティングマーチくらい覚えている。左利きでピッチャーでサウスポーって単純だなぁって思ったことは内緒だ。ため息交じりに言えば、覚えていたことには満足したのか、成宮の目元が少しゆるんだ。わかりやすい。
「じゃあ、これからはサウスポー歌えよ!」
ビシッと左の人差し指で私を指すと、満足したのか、自分の席へと戻っていく。いったい何だったのか。その背中をあっけにとられて見送った。ふと視線を感じてその先を見れば、神谷と目があった。きっと今のやり取りを全部見ていたのだろう。
「何なの、あれ」
「坊やだからな」
にやにやと笑う神谷の言葉に私はため息をつくしかできない。
「まぁ、おまえもいい勝負だと思うぜ」
それって私も子供だって意味なのか。じろっとにらむと、神谷は首をすくめた。
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