はらっぱ 小話
ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。
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伊佐敷くん*小型犬
高校の時のあだ名は何だと聞かれて、そう言うと聞いた女は明らかにバカにしたように繰り返した。
「さっぱりわからへんわ、何それ」
「犬だ、犬!」
「何あんた犬なん? 人に見えるけど、三回回ってワンて鳴いてみ?」
「なんでンなことしなきゃならねぇんだよ!」
がなりたてるが、そいつは一向にかまう気配はない。それどころか
「ならねぇんだよ、やってー! うけるわぁ」
バンバンとオレの背中を叩きながら笑う。うける意味が全然わからねぇ。
オレ自身が女から避けられると思っていたぶっきらぼうなところや言葉遣いの悪さは、関西に来てしまえばもっとひどいやつらが多くいて、全然たいしたことなかった。本当にスピッツの名の通り小型犬だったのだと妙に納得しまう。
関西弁はガサツに聞こえるのに、ちょっとした抑揚が妙に耳に心地良くて不思議だ。コイツにしたって時折どきっとするほど可愛く思える口調になるときがある。
「あ、もう休み時間終わりやん」
「おう、行くか」
何だかんだと重いリュックを背負いなおす。
「なぁなぁ、伊佐敷伊佐敷」
「なんだよ」
「なんもない、呼んだだけー」
「…小学生かっ!」
ケタケタと笑いながら先を歩く彼女の頭を小突く。さらに笑う彼女に妙に心が浮き立って、ちょっときつめに小突いてやった。
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