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はらっぱ 小話

ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。

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メイちゃん*ワンライ「最後の夏」先輩マネ視点


 明日、大阪へと向かう。3年のマネージャーである私は、ここ野球部専用のグラウンドに来ることは、もうない。練習後になんとなく感慨深くなって、グラウンドを眺めていた。西日に照らされたグラウンドは整備している1年生の動く影がわずかに見えるだけだ。

「あれ。先輩、荷物多いねー」

 不意に後ろから声が聞こえた。振り返れば、成宮が立っている。成宮はすでにTシャツに短パン姿だ。タオルを肩にかけたまま、髪が少し濡れている。シャワーもすでにすませた様子だ。

「マネ部屋に置いてた私物持って帰るから」

 荷物を成宮に見せるように笑うと、成宮はキョトンと目を丸くさせた。

「なんで?」
「なんでって、もう…私ここには来ないから」

 そう言うと、成宮はひどく不機嫌な顔になった。

「なにそれ、本気?! 勝つから! 優勝して帰ってくるんだからね!」

 ぷんぷんっという表現が似合う成宮の食って掛かってくるような口調に、思わず降参ポーズで笑ってしまった。

「わかってる。優勝するって、成宮が日本一にしてくれるって、みんなわかってるよ」
「じゃあ、なんで」

 なだめるように言うと、少し落ち着いた成宮はくちびるだけとがらせた。

「優勝しても私たちは引退だもん」
「国体あるじゃん!」
「選手はね。マネは夏で引退してるじゃん。去年もそうだったでしょ」

 そうだっけ、と成宮は眉を寄せる。去年の夏の終わりの成宮は自分を責めるあまり、当時の周りのことはあまりよく覚えていないようだった。去年の夏の話になると少し分が悪いと感じているのが空気でわかる。

「そっか、そうだっけ」

 目線を外して人差指でこめかみをかく成宮は、少しバツが悪そうだ。

「そ。だから私たちは、負け知らずで引退させてもらえるんだよね」

 その言葉に成宮はさっきとは打って変わって、顔をぱあっと輝かせた。

「うん、任せて! 日本一で引退だよ!」

 ビシッと左手の人差し指を私に突き出して、成宮は得意満面の表情だ。成宮の言葉を私たちは誰よりも信じている。成宮がそのためにどれだけの努力をしたか知っているからだ。

 最後の夏を、期待を、当たり前のように背負ってくれる成宮に感謝の気持ちと誇らしい思いを、私は抱いた。


 

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