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はらっぱ 小話

ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。

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メイちゃん*ワンライ「もしも魔法が使えたら」

もし私が成宮だったら。もしも、魔法が使えたら、あの日のあの一投をなかったことにするんじゃないかな。それとも夏の甲子園優勝できるようにするとか。

そんな浅ましい私の考えをよそに、記者に囲まれた成宮はあっさりと答えた。

「身長欲しいかも。最低180かな~。あ、でも魔法で伸びるなら185とか!」

質問をした記者はなるほどねと笑って、メモを取る。雑誌のインタビューの軽い質問だ。けれど記者は少し意地悪な顔をしてもう一度成宮に問いかけた。

「あの一投を魔法でナシにしたくないの?」

ぴくりと成宮の眉が上がったのがわかった。きっと記者も気づいている。けれど成宮はかぶっていた帽子をとって、自分を落ち着かせるようにあおぐ。

「したいけど、したくない」
「それは、経験としてよかったと思ってるってことかな」
「まぁね。先輩には悪いけど…。自分のためにはよかったと、今は思ってる」

記者の目をまっすぐに見て言うと、成宮はオレってカッコイーなんて、ちゃめっけたっぷりの笑顔をみせる。

「じゃあ、魔法でこの夏の大会で甲子園優勝とか考えないの」

成宮に何を語らせたいのか、この記者からは誠意を感じない。魔法が使えようと使えまいと、高校球児の、それも力があればなおのこと、夢見ることだろうに。

「そんなことで魔法使ったらもったいないじゃん! 自力でできることなのにさ」

成宮は記者の意図なんて気にも留めずに、自信満々だ。さすがの記者も苦笑する。

「じゃあ、期待してるよ」
「うん! まぁ、まずは東京獲っときます!」

宣言するようにたからかに指を空に突き刺す。そんな成宮の姿には、頼もしさがある。きっと今年も甲子園へ行く。成宮の指の先の空を見上げれば、初夏の色をしていた。

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