はらっぱ 小話
ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。
亮介さん*ホラーナイト
「重いんだけど」
と、振り向いた顔は私の友達ではなかった。ずっと友達だと思って、縋り付いていたリュックから手を離す。けっこう長い間このリュックを掴んでたんだけど…。
「すいません」
えへっと笑ってごまかそうとしてみたけれど、彼は冷やかなままだ。小柄な、同年代、かな? 首からゾンビのえじきを3つもぶら下げている。数が多くても効果は一緒だと思う。けれど、やたらとゾンビに追いかけられた理由がわかった。その子のゾンビのえじきのせいだったんだ。そのせいもあって、長い間、友達と気づかずにいたんだろう。
「まぁ、いいけど。それ、どこで売ってるんですか」
そう言って私が首からかけているゾンビの血をしめした。フードカートとかどこでも売ってるんだけどな。ここからなら…
「あっちのフードカート、です」
「フードカート」
私の言葉を繰り返して、パンフレットに目をこらす。パークに慣れてないみたいだ。イントネーションも関西じゃないし、遠方から来たのかも。その時、私の携帯が鳴った。友達からラインが入ったのだ。
「えっ、ひどー」
友達たちは、はぐれた私を置いて、先に貞子に行ってしまった。
「何、置いてけぼりにされたの」
彼はふっとバカにしたように笑った。誰のせいだと思ってるんだ。いや、自業自得だけど。それでもバカにされたことに、むっとして無言でにらむけど彼は気にするそぶりもない。
「じゃあ、ちょうどいいや。フードカートまで案内してもらえますか」
「は」
「だって、一人でしょ。今オレと離れて大丈夫なんですか」
丁寧な言葉使ったり、無遠慮だったり、今一つ、この子がつかめない。ただ、わかったことは一つだけ。私の好きなSっ気を醸し出しているってこと。
確かに友達とはぐれたし、このゾンビエリアで一人になるのはイヤだ。
彼に了承するよりも早く、後ろでキャーという悲鳴とブィーンというイヤな音が響いて、私は彼の後ろに素早く回る。彼は来た来たと喜んでスマホのカメラをかまえている。
ゾンビは彼をめがけてやってくる。嬉しそうに写真を撮る彼の後ろで、今日の夜はきっと長くなると思った。
と、振り向いた顔は私の友達ではなかった。ずっと友達だと思って、縋り付いていたリュックから手を離す。けっこう長い間このリュックを掴んでたんだけど…。
「すいません」
えへっと笑ってごまかそうとしてみたけれど、彼は冷やかなままだ。小柄な、同年代、かな? 首からゾンビのえじきを3つもぶら下げている。数が多くても効果は一緒だと思う。けれど、やたらとゾンビに追いかけられた理由がわかった。その子のゾンビのえじきのせいだったんだ。そのせいもあって、長い間、友達と気づかずにいたんだろう。
「まぁ、いいけど。それ、どこで売ってるんですか」
そう言って私が首からかけているゾンビの血をしめした。フードカートとかどこでも売ってるんだけどな。ここからなら…
「あっちのフードカート、です」
「フードカート」
私の言葉を繰り返して、パンフレットに目をこらす。パークに慣れてないみたいだ。イントネーションも関西じゃないし、遠方から来たのかも。その時、私の携帯が鳴った。友達からラインが入ったのだ。
「えっ、ひどー」
友達たちは、はぐれた私を置いて、先に貞子に行ってしまった。
「何、置いてけぼりにされたの」
彼はふっとバカにしたように笑った。誰のせいだと思ってるんだ。いや、自業自得だけど。それでもバカにされたことに、むっとして無言でにらむけど彼は気にするそぶりもない。
「じゃあ、ちょうどいいや。フードカートまで案内してもらえますか」
「は」
「だって、一人でしょ。今オレと離れて大丈夫なんですか」
丁寧な言葉使ったり、無遠慮だったり、今一つ、この子がつかめない。ただ、わかったことは一つだけ。私の好きなSっ気を醸し出しているってこと。
確かに友達とはぐれたし、このゾンビエリアで一人になるのはイヤだ。
彼に了承するよりも早く、後ろでキャーという悲鳴とブィーンというイヤな音が響いて、私は彼の後ろに素早く回る。彼は来た来たと喜んでスマホのカメラをかまえている。
ゾンビは彼をめがけてやってくる。嬉しそうに写真を撮る彼の後ろで、今日の夜はきっと長くなると思った。
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亮介さん*デコピンと照れ
ビシッといつも通りのデコピンのはずだった。
イタッと額を押さえる彼女の目が涙目になっている。
あれ、いつもよりも強かった?
元々オレは素直じゃないし、照れ隠しもあって、つい好きなだけに彼女には悪態をついてしまう。
傷つけたいなんて思ってない。だから、そんなにきつくはしていないはずだ。
少し心配になって、でもそんな素振りは見せずに彼女の額に置かれた手をのける。
「小湊?」
オレのいつもとは違う行動に彼女は涙目のまま顔を上げた。
額は少し白いひっかき傷になっていた。爪がひっかかってしまったのだろう。
そういや、昨日切ろうと思ってたんだった。
彼女の後ろ頭に手を回して、自分も一歩彼女に近づいた。
そのまま、額にくちびるをそっとつける。ごめんって口にしないかわりに。
彼女の顔は一瞬で赤く染まった。その顔を手で無理やり押すようにして向こう側に向ける。
今の自分の顔は見られたくない。
だって、きっとオレは耳まで赤くなっているに違いないから。
イタッと額を押さえる彼女の目が涙目になっている。
あれ、いつもよりも強かった?
元々オレは素直じゃないし、照れ隠しもあって、つい好きなだけに彼女には悪態をついてしまう。
傷つけたいなんて思ってない。だから、そんなにきつくはしていないはずだ。
少し心配になって、でもそんな素振りは見せずに彼女の額に置かれた手をのける。
「小湊?」
オレのいつもとは違う行動に彼女は涙目のまま顔を上げた。
額は少し白いひっかき傷になっていた。爪がひっかかってしまったのだろう。
そういや、昨日切ろうと思ってたんだった。
彼女の後ろ頭に手を回して、自分も一歩彼女に近づいた。
そのまま、額にくちびるをそっとつける。ごめんって口にしないかわりに。
彼女の顔は一瞬で赤く染まった。その顔を手で無理やり押すようにして向こう側に向ける。
今の自分の顔は見られたくない。
だって、きっとオレは耳まで赤くなっているに違いないから。
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