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はらっぱ 小話

ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。 夢っぽかったり日常的ぽかったり。

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メイちゃん&さっちゃん

「ねぇ、ちょっと、青道のマネさん!」

その言葉に振り向くと、今日の練習試合の相手だった稲実の成宮くんとカルロスくんが立っていた。

「何か」
「あっ、ブスマネだった」

私を指さして、さらりと成宮くんは言った。後ろでカルロスくんが、おいって焦った様に成宮くんを小突いた。

青道のマネージャーはイケてるのが三人、ブス一人って言われていることくらい知っている。もちろん、ブスが私だ。それに関してはもうあきらめた。今更、顔の造りが変わるわけではないし、男子なんてそんなもんだし。

ただ、陰で言われているのは気に入らなかった。男らしく真正面から言えばいいのにって何度も思ってきた。だから、成宮くんの言葉に私は傷つくことはなかったし、人懐っこい感じのせいかなんだか憎めない。

「で、何?」
「愛想ないなー。ま、いいや。革手知んない? これの左手」

ひらひらっと目の前で革手袋をふってみせた。見覚えのある皮手袋に、ジャージのポケットから対の左手を取り出した。さっき、ベンチ裏を片づけていてみつけたのだ。

「おー、あった! サンキュー」

手を出す成宮くんに、待ってと制す。

「何」

不服そうにくちびるをとがらせる。なんだろう、さっきから成宮くんの話し方とか表情とか、どこかで見たことがある気がすごくする。

「これ、中指破れてるから」

ジャージのポケットから簡易のソーイングセットを出した。手袋を一旦、成宮くんに渡して、ソーイングセットを開けた。すぐに使えるように、白と青と黄色と黒―青道カラーの糸を通した針を用意してある。そのうちの白い糸が通っている針を取り出した。

「え、何、縫ってくれんの?」
「すぐすむけど、あ、稲実のマネさんがしてくれる?」
「いや、うち男しかいねーの知ってんでしょ」

そう話す間にも成宮くんから手袋を受け取って、裏返す。指の先だし、縫うのは少しだ。すぐにかがり縫いで仕上げた。

「はい。できたらちゃんと補強して縫い直した方がいいけど」
「おぉー、すげー。あっというまじゃん。いい母ちゃんになれるよ」
「そこは嫁じゃねーの」
「母ちゃんも嫁じゃん?」

よくわからない成宮くんとカルロスくんの問答に、あぁ!と気づいた。成宮くんの母ちゃんの言い方がそっくりだったのだ。

近所のいたずらっ子、年長さんのあっくんに!

そういえば、あっくんも私のこと面と向かってブスブスと言ってくる。 成宮くんにあっくんを重ねて、笑みがこぼれた。

「何、笑ってんの」

くちびるをとがらせる。うん、あっくんそっくり。

「似てるな~って思って」
「オレに? 誰が? あっ、ジャニーズでしょ。てごしって言われるよ! よく知んないけど」

なぜか得意満面の顔で言うのも、そっくりで。

「近所のあっくん」
「あっくん?」
「年長さんだけどね」
きょとんとする成宮くんの後ろでカルロスくんが大爆笑した。


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