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  <title type="text">はらっぱ　小話</title>
  <subtitle type="html">ブログで書き散らした小話やワンライのログなど。
夢っぽかったり日常的ぽかったり。
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  <updated>2014-11-26T09:53:35+09:00</updated>
  <author><name>はらぺこ</name></author>
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    <published>2017-08-01T11:32:51+09:00</published> 
    <updated>2017-08-01T11:32:51+09:00</updated> 
    <category term="青道" label="青道" />
    <title>由井くん＊体育祭</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[台風一過の今日、澄み切った青空の下、体育祭が行われていた。<br />
運動部の推薦入学の子たちが中心になって盛り上がっていて運動が得意じゃない私もそのノリに便乗して楽しく過ごしていた。<br />
<br />
<br />

<div>グラウンドに200mのトラックが白線で書かれ、その周囲に縦割りで編成された色ごとにクラスの位置が指定されている。縦割りといっても、3学年5クラス計15クラスを3色に分けているので、それぞれ色によっては多い学年が違う。クラスごとの縦割りにしないのは、二年から理系と文系にクラス分けされていて、理系に当たるクラスがどうしても男子が多くなるためだ。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>お昼休みの後の最初の競技が部活対抗リレーで、私はそのリレーで記録係をすることになっていた。だからお昼休みが終わる少し前に一人でグラウンドの自分のクラスの位置に戻ってきた。するとそこにはすでに一人。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「由井くん？」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>小柄な彼は私の声にぱっと顔を上げると、まぶしかったのか少し目を細めた。私はその横に腰を下ろす。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「何してるの？」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>由井くんはブルーシートの上でなぜか野球のユニホーム姿でキャッチ―の防具をつけているところだった。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「部活対抗に出るんだ」<br />
「そうなんだ～」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>そういえば野球部だったなぁと思い出す。何となくイメージじゃないんだけど、こうしてユニホーム着ていると意外にも着慣れている感じが出ていて、妙に風格すら感じてしまう。ヘルメットをかぶってその上にマスクを乗せて、私を見た。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「花沢さんは？」<br />
「部活対抗の記録係」<br />
「だよね」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>くすっと笑う。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「何で笑うの」<br />
「え、いや、だって、ほら」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>言葉を濁して、笑いをこらえるように目を細めた。その意味はわかってる。午前中の競技で私は自分の運動能力の皆無さを周知徹底させたのだから。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「笑うなら笑えばいいのに」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>やけくそ気味に口をとがらせると、由井くんは遠慮なく笑った。可愛らしい笑いに怒ることも忘れてしまう。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「好きなだけ笑って」<br />
「ごめん、だって、すげーかわいいん&hellip;！　あ、いや、えと」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>うっかり口に出ただろう言葉に由井くん自身がびっくりした顔をしている。言われた私の方がびっくりしてるんですけど。ちょっとあせったような素振りを一瞬だけしたくせに、私からしっかり視線を合わせたまま真顔になった。しばらくそのまま目を合わせた後、ふっと柔らかく由井くんは笑った。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「うん、かわいい」<br />
「&hellip;ありがと」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>ほてる顔を自覚しながらそう言うと、由井くんはちょっと茶目っ気のある表情を作った。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「これで部活対抗の賄賂完了だね」<br />
「そんなことで記録は改ざんしないから！」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>もう、なんて小悪魔！<br />
<br />
<br />
</div>
<div>由井くんはまた声をあげて笑う。こんなに笑う子だったっけ。にこやかな印象はあるけど。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>部活対抗の出場者にゲートに集まるように告げるアナウンスが流れる。気づけば周りにはクラスの子たちも戻ってきている。そろそろ私も記録係の仕事に行かないといけない。私が立ち上がると由井くんもカチャカチャと防具の音をさせて立ち上がった。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「野球部はみんなそのカッコで走るの？」<br />
「うん、ユニホームだよ」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>と、指を指す。その先にはゲートへと先に向かう同じユニホーム姿の子たち。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「じゃなくて、このキャッチャーの」<br />
「ああ。オレはキャッチャーだからさ」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>頭に乗せたマスクを手で押さえて誇らしげに笑った。けれどその笑顔はかわいらしい顔立ちには似つかわしくないくらい自信が目に宿っている。強い意志とプライドに強烈なほどの男らしさを感じて、胸がキュンと痛くなる。<br />
<br />
<br />
</div>
<div>「じゃ、記録係がんばって」<br />
<br />
<br />
</div>
<div>ポンっと私の背中を叩くと、頭に乗せたマスクを手で押さえながら走っていく。小柄なはずなのにとても頼もしく見えるその背中を見送って、胸に何が刺さったのか自覚した。</div>
<div><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
</div>
<div>オマケ<br />
「なんで防具つけてんの」<br />
「キャッチ―だし。普通つけるでしょ」<br />
「オレらのとこそんな風習なかったけど&hellip;光舟もとってくっか？」<br />
「&hellip;」<br />
(葛藤する奥村光舟)</div>
<div></div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
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    <id>harappa.iku4.com://entry/99</id>
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    <published>2017-08-01T11:30:50+09:00</published> 
    <updated>2017-08-01T11:30:50+09:00</updated> 
    <category term="成宮鳴" label="成宮鳴" />
    <title>メイちゃん＊生まれる前から</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>目の前には８歳と６歳になる娘が二人と、それを両脇に抱えるように前のめりになっているパパがいる。<br />
<br />
</p>
<p>早く早くと三人は目をキラキラとさせて待っていて、エサをあげる直前の実家の犬を思い出した。<br />
<br />
</p>
<p>「じゃーん」<br />
<br />
</p>
<p>そんな効果音を口で出して、母子手帳ケースのポケットからエコー写真を取り出した。それに三人はつかみかからん勢いで覗き込む。<br />
<br />
</p>
<p>「どれ」<br />
「わかんなーい」<br />
「ママ～」<br />
<br />
</p>
<p>わかりにくいエコー写真を前に三人は首をひねって証拠を確認しようとしてる。<br />
<br />
</p>
<p>「あっ！これだ！」<br />
<br />
</p>
<p>長女が指を指すと、次女とパパは競うように顔を近づける。<br />
<br />
</p>
<p>「おおっ！」<br />
<br />
</p>
<p>確認できたパパは興奮のあまり立ち上がる。そのまま娘二人を抱えて振り回す。<br />
<br />
</p>
<p>「ヨシヨシヨシ！男の子だな！野球だ！江夏だ！甲子園だ！」<br />
「野球だ～！」<br />
「こうしえんだー」<br />
<br />
</p>
<p>パパに振り回された娘たちもキャッキャッとはしゃぐ。<br />
<br />
</p>
<p>その時、お腹がぐにーっと押された。お腹の中でも万歳でもしてるのか、それともうるさいと抗議してるのか。本当にこの子は外の音に反応してよく動く。押されて形が変わったお腹をよしよしとさすると、また動く。元気な子で嬉しくなる。これだけ元気な男の子なら野球が好きなパパの念願もかなうかもしれない。<br />
<br />
</p>
<p>「ねぇ、ママ。名前どうするの。ミイって男の子につけれないよ」<br />
<br />
</p>
<p>長女が息をあげて、はしゃぎすぎるパパから逃げてくると、嬉しそうにそっと私のお腹に手を乗せた。<br />
<br />
</p>
<p>「アイ、マイ、ミイじゃなくなるね」<br />
<br />
</p>
<p>三人目を妊娠したとわかったときにパパは冗談めかして上の子たちの名前からそんなことを言っていて、それからみんなお腹に話しかけるときはミイちゃんと呼んでいた。<br />
<br />
</p>
<p>「違う名前考えないとね」<br />
「メイだ！名選手、名監督、名球会！」<br />
「名って変」<br />
<br />
</p>
<p>漢字ももう習っている長女は口を尖らした。確かに名はない。メイって響きは悪くはないと思うけど。<br />
<br />
</p>
<p>「てんてんつかないのにするんでしょ」<br />
<br />
</p>
<p>偶然にも家族全員がひらがなに濁点がつけられない苗字にならって名前にも濁点がつけられない。<br />
<br />
</p>
<p>「とりあえずメイだ！漢字はまた祖父さんに画数だのなんだの見てもらえばいいだろ」<br />
<br />
</p>
<p>興奮が一段落したパパは冷蔵庫からノンアルコールビールを出しながら言う。まぁ、それでいいかなって思ったら<br />
<br />
</p>
<p>「鳴だ！」<br />
<br />
</p>
<p>突然叫んだ。<br />
<br />
</p>
<p>ビールを片手にダイニングテーブルのスポーツ新聞を手にする。<br />
<br />
</p>
<p>その見出しには今年甲子園で活躍した子の写真と鳴り物入りで入団！の文字。<br />
<br />
</p>
<p>「ヨシ！　成宮鳴だ！」<br />
「メイだ～！」<br />
「メイ～！」<br />
<br />
</p>
<p>またはしゃぎだす三人を見ながらお腹をなでる。やれやれと思うものの、みんなが三人目をどれほど楽しみにしているのかわかるから止める気にはならない。<br />
<br />
</p>
<p>「あなたの名前はメイだって」<br />
<br />
</p>
<p>甲子園とかプロ野球とかそんな夢物語は夢のままでかまわないから、元気に出てきてパパの念願のキャッチボールしてあげてね。<br />
<br />
</p>
<p>私の心の声に応えたのか、それともはゃしいでる三人の声に反応したのか、メイはぐにぐにとお腹を押してきた。<br />
<br />
</p>
<p><br />
＊＊＊＊＊<br />
<br />
生まれる前から愛されまくり。</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
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    <published>2017-08-01T11:27:45+09:00</published> 
    <updated>2017-08-01T11:27:45+09:00</updated> 
    <category term="伊佐敷" label="伊佐敷" />
    <title>伊佐敷くん＊小型犬</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[「スピッツ？」
<p><br />
高校の時のあだ名は何だと聞かれて、そう言うと聞いた女は明らかにバカにしたように繰り返した。<br />
<br />
</p>
<p>「さっぱりわからへんわ、何それ」<br />
「犬だ、犬！」<br />
「何あんた犬なん？　人に見えるけど、三回回ってワンて鳴いてみ？」<br />
「なんでンなことしなきゃならねぇんだよ！」<br />
<br />
</p>
<p>がなりたてるが、そいつは一向にかまう気配はない。それどころか<br />
<br />
</p>
<p>「ならねぇんだよ、やってー！　うけるわぁ」<br />
<br />
</p>
<p>バンバンとオレの背中を叩きながら笑う。うける意味が全然わからねぇ。<br />
<br />
</p>
<p>オレ自身が女から避けられると思っていたぶっきらぼうなところや言葉遣いの悪さは、関西に来てしまえばもっとひどいやつらが多くいて、全然たいしたことなかった。本当にスピッツの名の通り小型犬だったのだと妙に納得しまう。<br />
<br />
</p>
<p>関西弁はガサツに聞こえるのに、ちょっとした抑揚が妙に耳に心地良くて不思議だ。コイツにしたって時折どきっとするほど可愛く思える口調になるときがある。<br />
<br />
</p>
<p>「あ、もう休み時間終わりやん」<br />
「おう、行くか」<br />
<br />
</p>
<p>何だかんだと重いリュックを背負いなおす。<br />
<br />
</p>
<p>「なぁなぁ、伊佐敷伊佐敷」<br />
「なんだよ」<br />
「なんもない、呼んだだけー」<br />
「&hellip;小学生かっ！」<br />
<br />
</p>
<p>ケタケタと笑いながら先を歩く彼女の頭を小突く。さらに笑う彼女に妙に心が浮き立って、ちょっときつめに小突いてやった。<br />
<br />
</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>harappa.iku4.com://entry/97</id>
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    <published>2017-08-01T11:23:09+09:00</published> 
    <updated>2017-08-01T11:23:09+09:00</updated> 
    <category term="成宮鳴" label="成宮鳴" />
    <title>メイちゃん＊玄関先の攻防</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[幼馴染の鳴ちゃんと初詣に一緒に行かなくなったのは小学校5年生のときだ。鳴ちゃんがリトルリーグのチームメイトたちと行くから私とは行かないと言ったから。リトルのチームメイトには同じクラスの男子もいたし、知らない子ばかりじゃないから一緒に行くと言う私に鳴ちゃんは「女なんか連れてけるか」と一蹴したのだった。もちろん6年生のときも同じやりとりをした覚えがある。
<p><br />
中学生のときは、鳴ちゃんはシニアのチームに所属したまま、学校では陸上部だった。私は鳴ちゃんに自分が陸上部だから私も陸上部に入れと言われて、陸上部に入った。私は何かに秀でていたわけではないけれど、それなりに部活を楽しんでいた。部活でみんなで初詣に行こうねという話が出ていたから、私はすっかり鳴ちゃんも一緒だと思っていたのに、鳴ちゃんはシニアで行くから陸上部では行かなかった。<br />
<br />
</p>
<p>そして、今年。高校生になった今、私は同じ間違いはもうしないと、さすがに鳴ちゃんと初詣に行くことは考えてなかった。5年かけて学習したんだ、偉いねとは鳴ちゃんのお姉ちゃんのセリフだ。ちょっとひどい。<br />
<br />
</p>
<p>なのに、どうして。<br />
<br />
</p>
<p>目の前でむっつりと腕を組んでる鳴ちゃんがいる。そこにいられると玄関から出られない。すごい邪魔なんだけど。<br />
<br />
</p>
<p>「のけてよ～。待ち合わせに遅れちゃう」<br />
「行かなきゃいいじゃん」<br />
「約束してるの」<br />
<br />
</p>
<p>鳴ちゃんの横を無理矢理通ろうとするとしたけれど、鳴ちゃんの腕が私の前をさえぎった。壁に手をついて、私を見下ろしている。これってちょっとした壁ドンだなぁなんて、ちらっと頭をよぎった。<br />
<br />
</p>
<p>「じゃあ、オレは誰と初詣行くんだよ」<br />
<br />
</p>
<p>正月早々鳴ちゃん節炸裂。<br />
<br />
</p>
<p>「部活で行かないの」<br />
「3日の練習初日にみんなでガッコの近くの行くんだから、わざわざ集まんねぇ」<br />
「シニアとかリトルとかのチームメイトは」<br />
「みんな自分のガッコのヤツと行くって」<br />
<br />
</p>
<p>なるほど。残ったのは私なんだ。勝手だよね。でもそれが鳴ちゃんだけど。<br />
<br />
</p>
<p>「だいたい、普通オレと行くって考えるだろ」<br />
<br />
</p>
<p>少し声のトーンが変わった。ため息までついている。普通に考えて今まで一緒に行ってくれなかったのが鳴ちゃんじゃない。<br />
<br />
</p>
<p>「5年かけて学習したの」<br />
「はぁ？！　何それ」<br />
「だって、ずっと行ってくれなかったから」<br />
「それは、でも、今年はオレとって&hellip;普通そうだろ」<br />
<br />
</p>
<p>鳴ちゃんはまっすぐに私を見た。強くて意思のある本気の目。その目を向けられるとついほだされてしまう。わかった、じゃあ鳴ちゃんと行く、なんて言ってしまいそう。でもそんな訳にはいかない。部活で約束しているのだ。先輩だって来るのにドタキャンはできない。<br />
<br />
</p>
<p>「わかった、じゃあ、帰ってきたら鳴ちゃんと行くから」<br />
「はぁ？！　何言ってんの。初詣じゃなくなるじゃん」<br />
<br />
</p>
<p>もうダメだ。これ以上玄関で押し問答していたら遅れてしまう。強行突破を試みた。<br />
<br />
</p>
<p>「あっ、テメェっ」<br />
<br />
</p>
<p>腕の下をくぐり抜けた私の首ねっこを鳴ちゃんは容易くつかんだ。服がひっぱられて首がしまる。苦しくて涙目になる私を見て、さすがに悪いとつぶやくように言う。けれど掴んでいた手は首元から袖口にうつっただけて離してはくれなかった。<br />
<br />
</p>
<p>そりゃあ、私だって鳴ちゃんと行きたいと思っていた。でも今までの経験が行けなかった場合のダメージを容易に想像させて、惨めな気持ちになって傷つくのが嫌で部活で約束したのだった。<br />
<br />
</p>
<p>だからこうして私と行くつもりで鳴ちゃんが来てくれたことは嬉しいんだけど、約束は破れない。なんでいつも上手くいかないんだろう。タイミングが悪いっていうことはそのまま相性が悪いってことなんじゃないかとさえ思ってしまう。<br />
<br />
</p>
<p>意味なく涙が出そうになるのをぐっとこらえると、気づいたのか鳴ちゃんは大きく息を吐いた。それと同時に袖口を握っていた鳴ちゃんの手が私の手を取った。昔から知ってるはずのマメだらけの固い手のひらは、知らない人みたいに大きくて息をのんだ。<br />
<br />
</p>
<p>「じゃあ、オレも一緒に行く」<br />
「&hellip;えぇ？！」<br />
<br />
</p>
<p>なんでそうなるの。<br />
<br />
<br />
</p>
<p>見上げれば、得意満面の鳴ちゃんの顔が私を見ている。そして反論する間もあたえずに、私の手を引いて玄関を開ける。ひやっとした空気が前を行く鳴ちゃんの匂いを運んできて、落ち着かない気持ちになった。<br />
<br />
</p>
<p>「彼氏だーってちゃんと紹介してよ！」<br />
<br />
</p>
<p>ちょっとすねたような口調でそう言うと力任せにひっぱって、自分の腕の中に私を納めてしまった。</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>harappa.iku4.com://entry/96</id>
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    <published>2014-11-26T23:14:59+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T23:14:59+09:00</updated> 
    <category term="成宮鳴" label="成宮鳴" />
    <title>メイちゃん＊ワンライ「もしも魔法が使えたら」</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>もし私が成宮だったら。もしも、魔法が使えたら、あの日のあの一投をなかったことにするんじゃないかな。それとも夏の甲子園優勝できるようにするとか。</p>
<p>そんな浅ましい私の考えをよそに、記者に囲まれた成宮はあっさりと答えた。</p>
<p>「身長欲しいかも。最低180かな～。あ、でも魔法で伸びるなら185とか！」</p>
<p>質問をした記者はなるほどねと笑って、メモを取る。雑誌のインタビューの軽い質問だ。けれど記者は少し意地悪な顔をしてもう一度成宮に問いかけた。</p>
<p>「あの一投を魔法でナシにしたくないの？」</p>
<p>ぴくりと成宮の眉が上がったのがわかった。きっと記者も気づいている。けれど成宮はかぶっていた帽子をとって、自分を落ち着かせるようにあおぐ。</p>
<p>「したいけど、したくない」<br />
「それは、経験としてよかったと思ってるってことかな」<br />
「まぁね。先輩には悪いけど&hellip;。自分のためにはよかったと、今は思ってる」</p>
<p>記者の目をまっすぐに見て言うと、成宮はオレってカッコイーなんて、ちゃめっけたっぷりの笑顔をみせる。</p>
<p>「じゃあ、魔法でこの夏の大会で甲子園優勝とか考えないの」</p>
<p>成宮に何を語らせたいのか、この記者からは誠意を感じない。魔法が使えようと使えまいと、高校球児の、それも力があればなおのこと、夢見ることだろうに。</p>
<p>「そんなことで魔法使ったらもったいないじゃん！　自力でできることなのにさ」</p>
<p>成宮は記者の意図なんて気にも留めずに、自信満々だ。さすがの記者も苦笑する。</p>
<p>「じゃあ、期待してるよ」<br />
「うん！　まぁ、まずは東京獲っときます！」</p>
<p>宣言するようにたからかに指を空に突き刺す。そんな成宮の姿には、頼もしさがある。きっと今年も甲子園へ行く。成宮の指の先の空を見上げれば、初夏の色をしていた。</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
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    <id>harappa.iku4.com://entry/95</id>
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    <published>2014-11-26T23:12:21+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T23:12:21+09:00</updated> 
    <category term="成宮姉" label="成宮姉" />
    <title>全力で姉＊ワンライ「約束」</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>まだ私より小さくて、ぷっくりとした子供らしい手。その左手の小指を鳴は私に突き出した。</p>
<p>「やくそく」</p>
<p>父親の影響で、鳴も野球が好きになっていた。父親とキャッチボールをして育ち、小学校一年の夏には初めて家族で甲子園に観戦も行った。</p>
<p>いつしか鳴は甲子園に出る、そんな夢を口にするようになった。</p>
<p>そんな野球少年でも、リトルリーグに入れるのは三年生になってから。チームに入れない鬱憤か、元々のやんちゃな性格のせいか、とにかく問題をおこしてばかりいた。</p>
<p>ある日、公園で鳴が他の子を突き飛ばしているのを私は見た。すぐに駆け寄って、鳴を叱った。もちろん、突き飛ばしたにはそれなりに理由があったと後でわかったけれど、だからといって、手を出しちゃダメだ。</p>
<p>「だって&hellip;」</p>
<p>と、言い訳する鳴の頭に手を乗せる。ふわっとした猫っ毛はあっちこっちにはねていて、それはまるで鳴の奔放な性格そのもの。</p>
<p>「暴力ふるう子は甲子園に出してもらえないんだよ」</p>
<p>少し脅すように言うと、鳴は目を大きく見開いた。</p>
<p>「うまくても？」<br />
「どんなにすごい選手でも」<br />
「ほんと？」</p>
<p>恐る恐る私をうかがうように見る。まだ小学校一年生の鳴にしてみれば、１０歳近く離れた姉の私は母や父と同じくらい大人なのだ。</p>
<p>「も、しない」<br />
「ほんと？」</p>
<p>こくんと大きくうなずく鳴をあやすように頭をなでる。</p>
<p>「やくそく」</p>
<p>鳴はそう言って、左手の小指を私に出したのだ。</p>
<p>その後、鳴は相変わらずやんちゃし放題だったけれど、他の子に手を出すことはなくなった。</p>
<p>リトルリーグに入って、野球三昧の日々を送り、性格は変わらずだったけど、いつしか背は私を追い抜き、手のひらはマメで固く、そしてなにより大きくなっていった。</p>
<p>中三の秋には自分で進路を決めていた。</p>
<p>「稲実」</p>
<p>甘えん坊の鳴が寮生活を選ぶなんて思ってもみなくて、私も、母も妹もショックが大きかった。誘われてたとはいえ、家から通える野球の強豪校からだって誘いはあったのに。</p>
<p>「そっ！　稲実入って、甲子園連れてってあげるから！」</p>
<p>任せて、と胸を張る。</p>
<p>「ほら、約束。オレ、姉ちゃんとの約束破ったことないもんね」</p>
<p>得意満面の顔でそう言うと左手の小指を私に出す。</p>
<p>その手はあの小さなころの手とは違う。鳴の努力と成長の証。それがわかっているのに、あのやわらかなゆびきりはもうできないのだと思うと少し寂しい。</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
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    <published>2014-11-26T23:09:36+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T23:09:36+09:00</updated> 
    <category term="御幸" label="御幸" />
    <title>メイちゃん＊ワンライ「最後の夏」先輩マネ視点</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p><br />
　明日、大阪へと向かう。３年のマネージャーである私は、ここ野球部専用のグラウンドに来ることは、もうない。練習後になんとなく感慨深くなって、グラウンドを眺めていた。西日に照らされたグラウンドは整備している１年生の動く影がわずかに見えるだけだ。</p>
<p>「あれ。先輩、荷物多いねー」</p>
<p>　不意に後ろから声が聞こえた。振り返れば、成宮が立っている。成宮はすでにTシャツに短パン姿だ。タオルを肩にかけたまま、髪が少し濡れている。シャワーもすでにすませた様子だ。</p>
<p>「マネ部屋に置いてた私物持って帰るから」</p>
<p>　荷物を成宮に見せるように笑うと、成宮はキョトンと目を丸くさせた。</p>
<p>「なんで？」<br />
「なんでって、もう&hellip;私ここには来ないから」</p>
<p>　そう言うと、成宮はひどく不機嫌な顔になった。</p>
<p>「なにそれ、本気？！　勝つから！　優勝して帰ってくるんだからね！」</p>
<p>　ぷんぷんっという表現が似合う成宮の食って掛かってくるような口調に、思わず降参ポーズで笑ってしまった。</p>
<p>「わかってる。優勝するって、成宮が日本一にしてくれるって、みんなわかってるよ」<br />
「じゃあ、なんで」</p>
<p>　なだめるように言うと、少し落ち着いた成宮はくちびるだけとがらせた。</p>
<p>「優勝しても私たちは引退だもん」<br />
「国体あるじゃん！」<br />
「選手はね。マネは夏で引退してるじゃん。去年もそうだったでしょ」</p>
<p>　そうだっけ、と成宮は眉を寄せる。去年の夏の終わりの成宮は自分を責めるあまり、当時の周りのことはあまりよく覚えていないようだった。去年の夏の話になると少し分が悪いと感じているのが空気でわかる。</p>
<p>「そっか、そうだっけ」</p>
<p>　目線を外して人差指でこめかみをかく成宮は、少しバツが悪そうだ。</p>
<p>「そ。だから私たちは、負け知らずで引退させてもらえるんだよね」</p>
<p>　その言葉に成宮はさっきとは打って変わって、顔をぱあっと輝かせた。</p>
<p>「うん、任せて！　日本一で引退だよ！」</p>
<p>　ビシッと左手の人差し指を私に突き出して、成宮は得意満面の表情だ。成宮の言葉を私たちは誰よりも信じている。成宮がそのためにどれだけの努力をしたか知っているからだ。</p>
<p>　最後の夏を、期待を、当たり前のように背負ってくれる成宮に感謝の気持ちと誇らしい思いを、私は抱いた。</p>
<p><br />
&nbsp;</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
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    <published>2014-11-26T23:02:50+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T23:02:50+09:00</updated> 
    <category term="成宮鳴" label="成宮鳴" />
    <title>メイちゃん＊ワンライ「横顔」女の子視点</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[夜の闇にぽっかりと浮かび上がる屋台の電燈に照らされた成宮に目を奪われた。ただ投げるという動作をこんなにきれいだと思ったことはなかった。<br />
<br />
<br />
　夏休みもあと１週間で終わるという週末に毎年恒例の地蔵盆が公園で行われていた。地蔵盆は小学生がメインで、すでに中学生の私が楽しめるのはいくつかのゲームとおやつでもらえる凧せんくらいだ。それでも友達たちとこの夏最後のイベントとして、浴衣を着て出向いた。<br />
<br />
「男子来てるじゃん」<br />
<br />
　友達が賑やかな集団を指さした。見ればクラスの男子と他クラスの男子が剣の形をしたペンシルバーンで遊んでいる。みんな野球のユニフォーム姿だ。<br />
<br />
「野球部&hellip;？」<br />
「違う、違う。シニアでやってる子らじゃん」<br />
<br />
　野球部とシニアの違いをよく知らない私に、男兄弟のいる友達が詳しげに言う。そして、いいこと考えたと私に笑った。<br />
<br />
「さっきの的当て、あいつらにしてもらおうよ」<br />
<br />
　中学生の私たちができる数少ないゲームの一つに的当てがあった。小豆の入った小袋を欲しい商品めがけて投げて、当たって台から落とせばもらえるというシステム。さっきみんなでしたのだけれど、私だけ取れなかったのだ。<br />
<br />
　有無を言わさず、グイっと私をひっぱっていく。その先にいる男子の姿を見て、なるほどと納得した。友達がいつもいいなと言っている男子だったからだ。話すきっかけ欲しかっただけじゃないの。なんだかダシに使われたみたいで、ちょっとむっとする。<br />
<br />
「あー、的当てな」<br />
「ねー、やってよー」<br />
<br />
　友達がねだるように男子に言うが、なかなかうんとは言わない。<br />
<br />
「オレら、出禁なんだよね。的当ては」<br />
「何で？」<br />
「カンタンに当てちゃうからさ～」<br />
<br />
　そう困ったように笑った男子は、ちょっと考えてから後ろで騒いでいる集団に振り向いた。<br />
<br />
「鳴、ちょっと」<br />
<br />
　その呼びかけに集団の中から私と同じクラスの成宮が剣の形をしたペンシルバルーンを担いでやってきた。陸上部だと思っていた成宮の野球のユニフォーム姿にちょっと驚いた。上は黒いシャツだけど白いズボンは泥だらけだ。<br />
<br />
「なーに」<br />
<br />
　成宮は少し不機嫌そうにくちびるをとがらせた。<br />
<br />
「的当て、やってやってよ」<br />
「はぁ？！　なんでオレが！　だいたい、出禁じゃん」<br />
「でもほら、的当ての当番してるの、仁志さんだし。鳴にならさせてくれるかもよ」<br />
「どうして？」<br />
<br />
　思わず口をはさんでしまった。だって成宮だけ特別にさせてもらえるかもしれないのが不思議だったからだ。<br />
<br />
　成宮は突然の私の声に、もしかしてと私の名前を口にして、顔をしげしげと見た。どうやら暗がりで私のことが誰かわかっていなかったらしい。同じクラスだってのにあんまりじゃない？<br />
<br />
「あの人、オレのファンなんだよね」<br />
<br />
　ふふんと成宮は得意げに笑った。その口の周りには凧せんのソースと青のりがついている。ファンだとかなんだとかの前に、口の周り拭きなさいよ。指さして指摘すると成宮はあわててシャツの首元で口の周りをぬぐった。<br />
<br />
「私だけあのマスコット取れなかったんだもん。みんなおソロなのに」<br />
<br />
　成宮の偉そうな態度に私も遠慮がなくなる。成宮の袖を掴んでマスコットを指さした。<br />
<br />
「あんなの欲しいの。バッカじゃないの」<br />
「うるさいなー。わかった、自信ないんでしょ」<br />
「なっ！　誰に向かって言ってんの。このオレが取れないと思うわけ？！」<br />
<br />
　思った以上に成宮は簡単に挑発に乗った。このオレがって言うくらいだ。よほど自信があるのだろう。見ててよ、と捨て台詞を吐いて、的当ての中の人に声をかけた。<br />
<br />
「ねー、仁志さん、一回させてよ」<br />
「鳴坊はダメダメ。ゲームになんないだろ」<br />
「だって、コイツがオレの実力見たいってんだもん」<br />
<br />
　と、成宮は私を指す。実力見たいとは言ってない。マスコットが欲しいだけなんだけど！　だいたいそんなに野球がうまいんだろうか。運動神経は悪くなかった気はするけど、この中では小柄な方だし、いまいち信用できないんだけどな。けれど私のそんな考えをよそに仁志さんは他の誰よりも鳴坊じゃ反則だろうとうなっている。<br />
<br />
「うーん、でもなぁ」<br />
「一回だけ、一回だけ。一発で落とすしさ。オレが投げるの間近で見れるんだよ」<br />
「言うなぁ。しょうがない。一回だけだぞ」<br />
<br />
　根負けしたのか仁志さんは成宮にゲーム券と引き換えに小袋を手渡した。成宮は私にペンシルバルーンを押し付けながら、小袋を２つ返そうとする。<br />
<br />
「３つもいらないよ」<br />
「一応な」<br />
<br />
　その一応が気に入らなかったのか、成宮の顔つきがすっと変わったのに私は気づいた。成宮は教室で先頭きってバカする男子だ。少し小柄だし、そんな子供っぽい成宮をクラスの女子は、私もだけど、男としてみなしていなかったのに。初めて見る真剣な表情に知らずに私は息をのんだ。<br />
<br />
　左の手の中で小袋の感触を確かめると、成宮はちらりと私を見た。挑発的で自信に満ちたその目に私の胸が高鳴った。思わずぎゅっとペンシルバルーンを握り締めた。それに気づいたわけではないだろうけれど、成宮は目を少し細めた。それと同時に無造作に小袋を投げた。<br />
<br />
　シャリっと小豆がこすれる音が、妙に耳に残った。<br />
<br />
　成宮の左腕がすっときれいに円を描いたと思ったら、もうマスコットは台から落ちていた。<br />
<br />
「すごい！」<br />
<br />
　思わず飛び上がって喜んでしまった。成宮はイエーと他の男子しハイタッチしている。仁志さんもさすがさすがと拍手だ。<br />
<br />
「見たか」<br />
<br />
　成宮は得意げに仁志さんから渡してもらったマスコットを私に差し出した。<br />
<br />
「うん、うん、ありがとう！　すごいね！　かっこいい！」<br />
<br />
　私は興奮のあまり自分がさらりとかっこいいと言っていることに気づいていなかった。成宮はちょっと口元をゆるめて、ペンシルバルーンを私から受け取ると他の男子たちの元へと戻っていく。<br />
<br />
　手の中のマスコットを見て、心の中にまだ成宮が残っている自分に気づく。振り返ると、成宮はもう私のことを忘れたかのように男子たちと盛り上がっている。決して大きくはないその背中をしばらく見つめた。<br />
<br />
　振り向いてよ。<br />
<br />
　そんな私の願いはむなしく、成宮が振り向く気配は微塵もなかった。残念に思いながら、それでも手の中のマスコットに満足して私も、先に行く友達の輪に戻った。<br />
<br />
　その少しあとに、成宮が私を振り返って見ていた事実を、私はもちろん知らないままで。]]> 
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    <author>
            <name>はらぺこ</name>
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    <published>2014-11-26T23:01:31+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T23:01:31+09:00</updated> 
    <category term="成宮姉" label="成宮姉" />
    <title>全力で姉＊ワンライ「横顔」</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[夜の７時を過ぎているのに、公園が賑やかだ。よく見れば、テントがいくつか建っていて子供たちがたくさんいる。休日出勤ですっかり忘れていたけれど、今日は地蔵盆だったのだ。<br />
<br />
　家へと帰る足を少し止めて、外から公園の中を懐かしく感じて眺めていた。と、賑やかな集団に中学生になる弟の姿をみつけた。何人かの男の子と一緒にいる。弟の鳴もみんなも、上半身は黒のアンダー姿の汚れた野球のユニフォーム姿だ。シニアの練習後にそのまま地蔵盆で遊んでいるんだろう。<br />
<br />
　地蔵盆は基本的に小学生のものだ。中学生は一部のゲームとおやつの凧せんをもらえるくらいなのに。剣の形をしたペンシルバルーンまで手にしてる。中学生にもなって恥ずかしいったら。<br />
<br />
　ふいに鳴たちの集団に女の子たちの集団が寄ってきた。女の子たちは浴衣を着たりして、また違う意味で地蔵盆を満喫しているようだ。そういえば私も浴衣着て、ゲームもせずに、いつもと違う公園の雰囲気を楽しむようにただ友達と喋っていたっけ。<br />
<br />
　鳴は女の子の集団に目もくれずにペンシルバルーンをバットのように振り回して遊んでいる。男の子たちは鳴に付き合っている子と、女の子の相手をする子に二分された。鳴はまだまだお子様側のようだ。<br />
<br />
　女の子の相手をしていた一人が鳴に何か話しかけた。その横には浴衣姿の女の子たちがいる。的当ての方を指さしてしきりに鳴に何か言っている。たぶん、鳴に投げるように言っているのだろう。<br />
<br />
　ペンシルバルーンの剣を肩にかつぐようにして、しぶしぶといった風情で鳴は二人について、的当てのテントに向かう。<br />
<br />
　なんだか、面白くなりそうな気がして、的当てが良く見える位置まで私も移動した。<br />
<br />
　的当ては小豆が入った小袋を並んでいる商品に当てて、台から落とせば商品がもらえるゲームだ。<br />
<br />
　鳴のコントロールなら当てることは造作ないことだろう。ただ小豆の小袋は軽いので商品を台から落とすのは難しいかもしれない。<br />
<br />
　浴衣の女の子が鳴のアンダーの袖を引っ張って、もう片方の手で商品を指す。そんな女の子のかわいい仕草に鳴は何とも感じないのかな。<br />
<br />
　鳴が女の子に何か言っている顔が見えた。ちょっとかっこつけてるのか、いつもの豊かな表情はしまわれている。その様子が弟の成長を垣間見たようでなんだかくすぐったい。<br />
<br />
　でもその口の周りにたこせんのソースと青のりがついているのが見えた。情けないなぁと思うと同時にまだまだ私の知っているかわいい弟の鳴らしくて、ほっとする。<br />
<br />
　女の子も明るいところにきたせいで気がついたのか、鳴の口元を指さす。鳴はちょっと動揺したようにアンダーの首元を口までひっぱって、口をぬぐった。それ、お母さんが知ったら怒るだろうな。<br />
<br />
　ゲーム券を的当てのスタッフに渡すと、何か言われたようだ。浴衣の女の子を指して鳴が何か言うとスタッフは仕方ないという顔をして小豆の小袋を3つ鳴に手渡した。鳴はペンシルバルーンを浴衣の女の子に持たせると、小袋を１つ手にする。何度か感触を確かめるようにしてから、案外無造作に投げた。<br />
<br />
　スパっと心地いい音がして、小さいなマスコットのついたキーホルダーに小袋が当たって台から落ちた。<br />
<br />
　浴衣の女の子は飛び上がって喜んでいる。<br />
<br />
　一発で落として面目躍如といったところか。イエーとシニアのチームメイトたちとハイタッチしている。<br />
<br />
　３回投げれても商品は一つしかもらえないシステムなので、鳴はもう投げずに残った２つをスタッフに返した。<br />
<br />
　周りで見物していたおじさんたちの、さすが鳴坊なんて声が聞こえてくる。今更ながら、ちょっと鼻高々だ。<br />
<br />
　鳴はキーホルダーをスタッフから受け取ると浴衣の女の子に渡す。ありがとうと喜ぶ女の子を尻目にペンシルバルーンを返してもらうとシニアのチームメイトの方へと戻っていく。<br />
<br />
　女の子は大事そうにキーホルダーを両手で包むようにして、自分も友達の輪へと戻る。ふと、足を止めて鳴を振り返った。しばらく鳴の背中を見ていたその子は、少しさみしそうに、また友達へと向き直った。<br />
<br />
　はたして、そのキーホルダーが欲しかっただけなのか、鳴に取ってもらったことが大事なのか。私にはわからないけど、きっと後者じゃないだろうか。それとも最初はキーホルダーが欲しかっただけだったけれど、取ってくれた鳴がかっこよかったから気持ちが動かされたのか。まぁ、口の周りをソースで汚しているような子があんなに簡単に取ってくれたらびっくりもするだろうけど。<br />
<br />
　鳴は地域のシニアに所属しているので中学校では陸上部だ。野球する鳴を学校の女の子たちが知らないのも仕方ない。きっと知っている鳴の姿は今日のペンシルバルーンで遊んでいるような教室でバカやっている姿だろうし。<br />
<br />
　いいもの見たと帰ろうとしたとき、鳴が振り返っている姿が目に入った。浴衣の女の子を目で追っているようだ。しばらく見ていた鳴は、ふと顔をほころばせた。喜んでいる彼女の姿に思わず顔がゆるんだように見えた。いつもの、どうオレすごいでしょ的な得意満面な顔ではなくて、愛おしさが含まれているように感じられるやわらかさで。年の離れた弟が女の子にそんな顔をするのを見る日がくるなんて思いもしてなくて、私はドキッとした。<br />
<br />
　わが弟ながら、いい男に育ってんじゃないの。<br />
<br />
　またまだお子様だと思っていた弟の成長ぶりに自然と笑みがこぼれた。気分よく家へと足が向かう。<br />
<br />
「あれ、帰り？」<br />
<br />
　いつのまにかシニアのチームメイトと公園から出てきていた鳴と出くわした。チームメイトの子たちは私の顔を見て「ちわっ」とあいさつする。それに会釈して鳴に向き直る。<br />
<br />
「地蔵盆だったんだねー」<br />
「うん、見て、射的でパーフェクト！」<br />
<br />
　そう言うとおやつがぎっしり詰まった袋を掲げてみせる。へへーと得意満面な顔だ。<br />
<br />
「的当てはしなかったの？」<br />
<br />
　していたのを見ておきながら聞いてみる。だって何て答えるか気になるし。鳴はついっと目をそらした。<br />
<br />
「的当てはオレらはさせてもらえねーの」<br />
「え、できなかったの？」<br />
「うん、野球してたら当てれて当然だからって」<br />
<br />
　私はほかの子たちを見る。みんな鳴が女の子にしてあげたのを知っているくせに、うんうんと口々にさせてもらえなくてって言う。男同士の結束みたいなものを見せられた気分だ。<br />
<br />
「そうなんだ」<br />
<br />
　そういえば、的当てをする前にスタッフに何か言われてたのを思い出した。ほんとはダメなんだぞーとか言われてたのかな。女の子のためってことできっと、スタッフもOKしてあげたんだろう。<br />
<br />
「腹へったー」<br />
<br />
　私の視線から逃れるように鳴は先に歩く。その横に追いついて、いつのまにか私よりも少し上にある顔を見上げた。その横顔はまだ私の知っている弟の顔だけど、今日のように少しずつ、知らない男の子の顔もするようになるんだろうなと思うと少しさみしくなった。<br />
<br />
　「何？」<br />
<br />
　じっと見る私にいぶかしむ。そんな鳴の首元を指した。<br />
<br />
「ソースと青のり。そんなとこつけてたらお母さんに怒られるから」<br />
「げっ！」<br />
<br />
　慌てて、手でゴシゴシと首元をこする。そんなことしたって取れないっていうの。<br />
<br />
「誰かとぶつかったときについたのかも」<br />
<br />
　よく言う！　あきれてため息をついたら鳴がねぇねぇ怒られないようにかばってよと拝むように私に手を合わせた。まったく、いつまでも私にとっては手のかかる弟なんだから。]]> 
    </content>
    <author>
            <name>はらぺこ</name>
        </author>
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    <id>harappa.iku4.com://entry/91</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://harappa.iku4.com/Entry/91/" />
    <published>2014-11-26T22:59:06+09:00</published> 
    <updated>2014-11-26T22:59:06+09:00</updated> 
    <category term="成宮鳴" label="成宮鳴" />
    <title>メイちゃん＊ワンライ「ヒッティングマーチ」</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[昨日から頭の中で山本リンダの「狙いうち」がリフレインしている。それというのも、昨日、野球部の応援に行ったせいだ。<br />
<br />
「なんで、狙いうち？」<br />
<br />
　突然話しかけられて、はっとする。うっかり鼻歌で歌ってしまっていたらしい。顔を上げると、成宮が少し不機嫌な顔をして私を見下ろしていた。<br />
<br />
「何か、昨日の試合で聞こえてたから、耳に残っちゃって」<br />
「気に入ったんだ？」<br />
<br />
　口の端を上げているのに、冷え冷えと感じるのは目が笑ってないからだ。<br />
<br />
「気に入ったっていうか、ほんと耳に残っただけだけど」<br />
「イケメンだもんね」<br />
「誰が？」<br />
<br />
　どうも成宮の言いたいことがわからない。ただ推測できるのは、相手チームの応援で流れていたものだから、あまりいい気がしないのだろうということくらいだ。<br />
<br />
　でも、昨日、勝ったのに。<br />
<br />
　昨日の試合では成宮が途中から投げて、そして、勝ったのだ。野球のルールを知らないわけではないけれど、プレーの細かいことまではわからない。ただ一年生の成宮が試合に出ることはすごいことだったくらいはわかる。そして、ほとんど打たれなかったことも。<br />
<br />
「狙いうちは一也のヒッティングマーチだから。アイツ、イケメンでしょ。気に入ったんでしょ」<br />
<br />
　ふんっと成宮は鼻を鳴らす。<br />
<br />
「イケメンかどうかなんてわかんないけど」<br />
<br />
　スタンドからあんな遠くの人の顔なんてほぼわからない。まぁ、成宮は見慣れているからわかったけど。それでも表情までは難しい。<br />
<br />
「イケメンだよ、アイツ。でも試合に勝ったのオレだからね！　てか、オレのヒッティングマーチは耳に残ってないわけ？！」<br />
<br />
　何が理由でこんなに絡まれなきゃいけないのか。成宮のお子様気質はすでに学年でも有名だけど、ほんとわからない。<br />
<br />
「サウスポーでしょ」<br />
<br />
　ちゃんと応援してたんだから、成宮のヒッティングマーチくらい覚えている。左利きでピッチャーでサウスポーって単純だなぁって思ったことは内緒だ。ため息交じりに言えば、覚えていたことには満足したのか、成宮の目元が少しゆるんだ。わかりやすい。<br />
<br />
「じゃあ、これからはサウスポー歌えよ！」<br />
<br />
　ビシッと左の人差し指で私を指すと、満足したのか、自分の席へと戻っていく。いったい何だったのか。その背中をあっけにとられて見送った。ふと視線を感じてその先を見れば、神谷と目があった。きっと今のやり取りを全部見ていたのだろう。<br />
<br />
「何なの、あれ」<br />
「坊やだからな」<br />
<br />
　にやにやと笑う神谷の言葉に私はため息をつくしかできない。<br />
<br />
「まぁ、おまえもいい勝負だと思うぜ」<br />
<br />
　それって私も子供だって意味なのか。じろっとにらむと、神谷は首をすくめた。]]> 
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            <name>はらぺこ</name>
        </author>
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